その日の夕食の間も、アリエッタは小説のことが気にかかっていた。クリスとその家
族を呼んでの夕食会は、いつものように穏やかな雰囲気で終わったのだったが、あまり
会話に加わろうとせずに、にこにこと笑っている時間が多かった。
アリエッタは、クリス達が帰ったあとすぐに自分達の部屋へと戻り、その短編小説の
ページを開いた。それとほぼ同時にトルティニタが部屋へと戻ってくる。
「それ、面白い?」
「え? あ……うん」
「そっか。なら、邪魔しないようにピアノでも弾いてようかな」
「そうだね」
トルティニタも悪気があるわけではなく、二人とも、それが決して邪魔になるとは思
っていなかった。それきり二人はなにも話さず、それぞれがやりたいことに没頭し始める。
ほとんど囁くような歌声と共にトルティニタがピアノを弾き始める。アリエッタは、
それに誘われるようにベッドに横たわり、本の世界へと戻った。
|